衝撃的な事件

大学に入学したばかりでとにかく友だちが欲しかった私。でもスポーツは苦手だし、男女がじゃれあっているだけのようなサークルに入るのは抵抗がありました。そんなとき、たまたま同じ高校から進学してきて一緒にサークルを探していた子が「演劇サークルに入ろう」と言い出したのです。なんでも彼女は演劇の脚本を書いてみたいとこのこと。私は演劇なんて全く興味がなかったのですが、まあ一人でどこか別のサークルに入るよりは心強いし、何より他に入りたいところがあるわけでもないし…ということで、その友だちと一緒に演劇サークルに入ることになりました。

 

入ってみてびっくりしたのは、あまりにも人数が少なかったこと。先輩は二人、一年生は私たちを入れてたったの四人でした。それでもこのサークルがサークルとして成り立っているのには理由があって、地域のアマチュア劇団と演劇サークルの顧問の先生に交流があり、サークルのメンバーもときどきその劇団の劇に出演させてもらっているそうなのです。アマチュアと言ってもけっこう古い歴史のあるちゃんとした劇団のようでした。そして私たち一年生も入って早々、その年の劇団の公演に出演させられることになったのです。あわよくば裏方で…と思っていた私は愕然としました。なんの知識も経験もなく軽い気持ちで入った一年生をいきなり役者としてステージに立たせるとは、なんて良い度胸をした劇団なのでしょう。

 

そしてまたしても衝撃的な出来事が起こりました。私と一緒に入った友だちが、なんとサークルに来なくなったのです。理由は自分がシナリオを書けるのでなければ意味がないから。劇団には劇団の脚本家がいるのでもちろん脚本を書かせてはもらえません。不満だったのはわかるけど、誘われて入った私はもうやめるにやめられない状況だし、劇に出演する話は進んでいくしでもうわけがわかりませんでした。友人の突然の離脱で自棄になった私は、毎日の発声練習や稽古に本腰を入れ始めました。与えられたのは名前もない役でしたが、もうここまで来たら最後までやりきってぎゃふんと言わせてやる!という意気込みで、言うなればもう自分を見失っていたのだと思います。

 

結局劇は大成功。私は劇団の人に正式に劇団に入らないかと誘われましたが、もうまっぴらごめんだったので断りました。一年間ほど毎日練習に明け暮れていたせいで、できた友だちはサークルの先輩二人と一年生二人だけ。友だちを作るという名目で入ったサークルのせいで友だちを作る時間さえ奪われてしまいました。ですがまあ、後悔はしていません。サークルは四年間地道に続けましたし、大学を卒業した今も、地元に帰って小さな劇団の役者としてちまちま劇に出演し、毎日楽しい日々を送っています。大学入学当時、あの友人が演劇サークルに誘ってくれなければ今の自分はいないと思うと、裏切った友人にも少しは感謝の気持ちが湧いてくるものです。