おしゃれなアルバイト

私は大学時代に、おしゃれなカフェアルバイトをするのが夢だった。

 

大学1年生の終わり頃に、某有名カフェチェーン店でアルバイトの採用が決まった。

 

そのお店は、山手線沿線のおしゃれな街で、大学までの通学途中であったこともあり、非常に都合も良かった。

 

 

 

しかし、憧れだったカフェでのアルバイトは、想像していた、おしゃれなだけの仕事内容ではなかった。

 

味や接客に対してもこだわりのあるチェーン店だったので、本社での研修を受け、店舗に配属されてからも、コーヒーや関連器具、商品に関する専門知識を勉強することが求められ、それができていないと厳しい指導を受けた。

 

とくに私が配属された店舗は、アルバイトの意識が非常に高く、アルバイトとはいえ、いい加減な仕事をしている人はいなかったし、そういう人は一週間も立たずに辞めていくことが常だった。

 

 

 

勤務時間についても過酷であった。朝は7時から開店、夜は23時半閉店のため、朝のシフトが入った日は4時半起床だった。大学の通学前にアルバイトに行き、3時間だけ働き、また、大学が終わったら、夕方から夜のシフトに入る日もあったが、店長に頼られて、シフトに入ることを求められることは、自分にとっていやな気持ちにはならなかった。

 

 

 

そんな中、私は必死に勉強をして、仕事に取り組んだ。研修で配られた資料だけではなく、自分で書店で関連書籍を購入したり、他の店舗に足を運んで自分の店舗にはないようなお店のオペレーションや接客を調査したりした。

 

日頃の仕事内容はスピードと高い質を求められたため、めまぐるしく日々が過ぎていったが、自分が努力をしてお客さんが喜んでくれたり、仲間や先輩に褒められることに充実感を感じることができた。

 

また、私がアルバイトをしていたチェーン店では、アルバイトにランクをつけていたが、そのランクが上がることに関してもやりがいを感じることができた。

 

 

 

時給に関しては、決して高くなかった。むしろ、当時の東京都内の平均的な飲食店の時給と比較すると安い方で、大学の友人からは、「家庭教師のほうが楽だし儲かるよ」などと言われることもしばしばあったが、私はこのアルバイトに誇りを持っていたし、厳しい環境で苦楽を共にしているアルバイト仲間と過ごすことが楽しくて、一度もアルバイトをやめようと思ったことがなかった。

 

 

 

この経験は、社会人になった今も非常に役に立っていると思う。

 

仕事に対してここまで高いプロ意識をもつことは、普通のアルバイトではなかなか身につかなかったのではないかと思う。

 

また、私は理系の学生だったのだが、このアルバイトがきっかけで接客業の素晴らしさを感じることができ、サービス業に就職した。

 

 

 

当時のアルバイト仲間とは今も定期的に合っており、そのたびに昔の過酷な仕事の話をしたりする。

 

それでもみんな、「あのアルバイトをしてほんとよかった」と口をそろえている。

 

アルバイトは、時給が高く、楽な仕事内容の方が一見いいように思えるが、このようなお金には変えられない経験と友人をつくることができる、厳しいアルバイトを経験することを私は薦めたいと思う。